恥ずかしい仕事、みっともない仕事はできないと、胸を張って言えるだろうか。

哲学者の鷲田清一氏は、『おとなの背中』という
本の中でこんなことを述べている。

民俗学者の宮本常一氏が、石積み職人についてこんなことを
語ったという。

あとから来たものが他の家の田の石垣をつくとき、
やっぱり粗末なことはできないものである。
まえに仕事に着たものがザツな仕事をしておくと、
こちらもついザツな仕事にをする
だから、将来、おなじ職工の眼にふれたときに
恥ずかしくないような仕事をしておきたいと。

鷲田清一氏は、それを受けて、こういっている。

いま、わたしたちはまだ見ぬ未来の世代に対し、
この石垣積み工のように、恥ずかしい仕事、
みっともない仕事はできないと、胸を張って言えるだろうか。

企業による品質不正問題や役所による統計不正問題など、
組織における不祥事が日々報道されている昨今、
胸を張って言える状況ではない。

令和という新しい元号を迎え、
あとに続く人のために、少しでもよい環境を整えておくことが
先人の責務ではないか。

とはいえ、そんなに気張ることでもないが、
よいもの、よいこと、よい人は残したいと思う。